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第11回林業雑学講座

皆さんこんにちは!

竜林業、更新担当の中西です。

 

さて今回

~困難~

ということで、今回は、林業において特に育成が難しいとされる樹木を中心に、その理由や課題、研究的な取り組み、今後の可能性までを深く掘り下げてご紹介!

 

日本の森林は約7割が人工林や二次林といわれており、その大半がスギ・ヒノキなどの経済林で占められています。しかし、近年では生物多様性や気候変動対応、国産広葉樹の需要増などにより、従来扱いづらかった樹木の育成にも注目が集まっています。

しかし中には、

「発芽率が低い」
「成長が遅すぎる」
「病害虫に極端に弱い」
「伐採後の再生が困難」

といった理由で、育成が難しい“繊細な樹木たち”が存在します。


育成が難しいとは?林業的な“難しさ”の定義


「育成が難しい」とは、単に成長が遅いということではありません。林業的には、以下のような要因が複合的に絡んでいます。

✅ 育成が難しい樹木に共通する特徴

要因 内容
発芽・育苗の困難さ 種子が少ない/発芽率が悪い/発芽時期が極端に限定されている
成長速度の遅さ 林業経済上“採算が取れるまでに数十年以上かかる”
土壌・環境の選り好み 日照・水分・土壌pHなどに極端に敏感
病害虫への弱さ 風倒・腐朽菌・特定病虫害に非常に弱い
人工植林や単独育成に不向き 自然更新を主とするため管理が困難

🌲 これらは、経済林としての価値や管理コストに大きく影響し、結果として「林業的に敬遠されやすい」という現実があります。


林業において育成が難しいとされる代表的な樹種


🌳 クヌギ(ブナ科)

  • 用途:炭材(特に備長炭)、椎茸原木など

  • 難しさの理由

    • 実生からの発芽率が低く、どんぐりの寿命が非常に短い(発芽までに乾燥するとほぼ死滅)

    • 成長に時間がかかり、炭用材にするには30年以上が必要

    • 台風による風倒被害を受けやすい

📝 現在では自然更新(伐採→萌芽更新)に頼るケースが多く、人工造林は極めて手間がかかる樹種


🌲 ブナ(ブナ科)

  • 用途:家具材・内装材・水源涵養林として重要

  • 難しさの理由

    • 種子の豊作が数年に1度と不定期

    • 陽樹(光を多く必要とする)でありながら、初期には日陰でしか育たないという“光要求の逆転現象”あり

    • 一定の湿潤気候・高冷地を必要とする

🧪 近年ではブナの天然更新・自然遷移を活かした「長伐期施業」が提案されていますが、収益性が極めて低い点が課題です。


🌲 ミズナラ(ブナ科)

  • 用途:ウイスキー樽・家具・フローリング材など

  • 難しさの理由

    • 育成初期にシカによる食害を受けやすい(若木が好物)

    • 森林内での競争に弱く、広葉樹林のなかで優占しにくい

    • 湿地や高標高地域に生育が限られ、大規模人工林には不向き

📦 近年のウイスキーブームで需要が高まっていますが、供給が追いつかず、希少化が進んでいます。


🌲 ケヤキ(ニレ科)

  • 用途:神社仏閣・高級家具・彫刻材など

  • 難しさの理由

    • 成長速度が極端に遅い(樹齢80年でも直径30cm以下)

    • 根の張り方が広く、間伐・移植が困難

    • ケヤキハフクロフシという病害が蔓延しやすい

🏯 文化財建築などの需要は根強いものの、現代の短期サイクル林業では扱いづらい代表的な広葉樹です。


なぜ今、難しい樹木の育成が見直されているのか?


✅ 1. 脱スギ・ヒノキ依存の流れ

  • 戦後植林されたスギ・ヒノキは大量に成熟期を迎えつつあるが、需要減少と価格下落が続いている

  • 一方で、広葉樹や“地域らしい樹種”の見直しが進み、地域ブランド材へのニーズが上昇中

🌱 多様な木材利用へのニーズが「難しいけど価値の高い樹木」を求め始めているのです。


✅ 2. 気候変動への対応

  • スギなど一部樹種は高温・乾燥に弱く、将来的に生育地が縮小する可能性あり

  • 一部広葉樹(例:ミズナラ、シデなど)は温暖化耐性に優れ、将来の主役候補

🌍 “難しいが、今後の森林の多様性と気候耐性を支える存在”として注目されています。


✅ 3. 観光・教育・生態系の観点

  • 高齢化により素材生産以外の林業(森林教育・観光林業など)への移行も視野に

  • 難育成の樹木は生物多様性や景観価値が高く、地域資源として活用しやすい

🍁 「育てにくさ」=「希少性」=「新しい価値」に転換されつつあります。


難しい樹木を育てるための工夫・研究動向


✅ ・種子保存と苗木技術の向上

  • 超低温貯蔵(−80℃)による種子寿命の延長

  • 微細気象制御ハウスでの高温・乾燥ストレス対策型育苗

  • 遺伝子情報を活用した発芽率向上の研究


✅ ・混植造林と自然遷移を活かした森林経営

  • 難育成樹種をスギ・広葉樹・針葉樹と混植し、互いに生育を助け合う構成に

  • 伐採後は更新せずに自然遷移に任せる「放置更新」とのハイブリッド運用も検討中


✅ ・ドローン・リモートセンシングの導入

  • 小面積でも衛星・ドローンで成長データをモニタリング

  • 育成困難地での高精度間伐・下草管理の効率化

🌲「手間をかけずに、難しい木を守る」技術が今、加速度的に進化しています。


難しいからこそ、未来に残す価値がある


育成が難しい樹木には、
✔ 繊細な生態
✔ 長い成長時間
✔ 高い管理負担
といった“育てにくさ”があります。

しかし、だからこそ彼らは、

✅ 森林の多様性を支え
✅ 地域文化や伝統工芸を守り
✅ 地球環境の変化に耐える存在

として、未来の林業を支える“希望の樹”でもあるのです。

林業の在り方が変わる今こそ、私たちは「育てにくい木」にこそ、もう一度光を当てる時なのかもしれません。

 

 

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